2014年6月8日日曜日

代謝序論① 代謝とは

代謝(metabolism)とは…

特定の分子から始まり、それを定められた形式で他の分子に変える一連の化学反応系のこと(代謝)

代謝の一般的なルール


代謝経路(metabolic pathway)と呼ばれる一連の反応で、段階的に燃料が分解される。
 または、大きな分子が形成される。
アデノシン三リン酸(ATP)がすべての生物における共通のエネルギー通貨であり、
 エネルギー放出経路とエネルギー消費経路をつないでいる。
炭素燃料の酸化がATPの形成を推し進める。
・代謝経路はたくさんある。しかし、反応の様式や特定の中間体の種類は同じ場合が多い
・代謝経路は厳密に調節されている

代謝は大きく2種類


異化反応(catabolic reaction, catabolism)
エネルギーを産出する反応
燃料を分解して細胞のエネルギーに変換する
燃料(糖質、脂質)→CO2+H2O+エネルギー

同化反応(anabolic reaction, anabolism)
エネルギーを必要とする反応
エネルギーを用いて単純な物質から複雑な構造をもつ物質を生合成する
エネルギー+前駆体→複雑な分子


熱力学的に不利な反応は有利な反応により駆動される


特異的な代謝経路の条件
①個々の反応が特異的であること
②反応全体が熱力学的に有利であること
 つまり、ギブスエネルギー変化が負

化学的に共役した一連の反応の全ギブスエネルギー変化は、
個々の過程のギブスエネルギー変化の総和に等しいので…
A⇄B+C ΔG°'=+21kJ/mol
B⇄D   ΔG°'=−34kJ/mol
合わせると
A⇄C +D   ΔG°'=−13kJ/mol
ギブスエネルギー変化が負になるので、自発的に反応が起こる。
このようにして、熱力学的に有利な反応と共役することで不利な反応が推し進められる。




ATPは生物システムにおけるギブスエネルギーの通貨である


代謝はエネルギーの通貨であるATPを使用して促進される
栄養素の酸化や太陽光に由来するエネルギーが利用しやすいATPに変換され、
エネルギーを必要とする過程においてエネルギー供与体となる

ATPの構造

アデニン、リボース、三リン酸単位からなるヌクレオチド(ATP)

ATP + H2O → ADP + Pi
ΔG°’ = −30.5 kJ/mol (−7.3 kcal/mol)
ATP + H2O → AMP + PPi
ΔG°’ = −45.6 kJ/mol (−10.9 kcal/mol)

ATP−ADP交換サイクルが生物システムでのエネルギー交換の基本様式である


ATPの加水分解は、共役反応の平行をシフトさせることにより代謝を駆動する


ATPが高いリン酸基転移ポテンシャルをもつのはなぜか?
共鳴による安定化
 共鳴によってADPとPiはATPよりはるかに安定化している。
 一方、ATPのγ−リン酸の場合、共鳴構造が少ない。
静電的反発
 pH7でATPの三リン酸部分には4個の負電荷が近接してあるため、静電的に不利な状態である。
水和による安定化
 水はATPのリン酸無水部分に結合するよりも効率的にADPとPiに結合して両分子を水和することにより安定化させる。

ATPのリン酸無水結合は高エネルギー結合
…加水分解されるときに大量のエネルギーが放出される


ATPより高いリン酸基転移ポテンシャルを持つ化合物もある

ホスホクレアチン、ホスホエノールピルビン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸など
なぜ、ATPが重要なのか?
生物学的に重要なリン酸化された分子の中でATPが中程度のリン酸基転移ポテンシャルを持っているから、リン酸基の担体として効率が良い



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